村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス』2020年

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今年も寒くなってきたので『ダンス・ダンス・ダンス』を読んだ。冬が来て気温が下がると僕は毎年甘いホットココアを大量に飲むようになり、村上春樹を読み返す。夏の暑い時には読む気がしない。日が短くなって夜が長くなると僕は村上春樹を読み返すのだ。毎年毎年読んでいるけれど読む度に感想が変わる。こっちの問題でそっちの問題ではない。

比較的短い文章の連続で良いテンポでサクサクと読む事が出来る。村上春樹の文章はポカリスゥエットのように身体に染み込んでくると言われる所以は単純に一文一文の短さにある。学がなくてもサクサクと読める。その読みやすさが簡単にそっち側の世界に入りこめることにも繋がり、ページを捲るのが楽しくなる。

僕が村上の作品を好きな理由は主人公がみな社会から一時的にドロップアウトするからだ。大学生の頃何もしないでダラダラと過ごしていた時に村上春樹の主人公だって何もせずにダラダラしているんだから俺だってまだ大丈夫。と謎の安心感を与えてもらっていたりした。社会人になった今は適当ではあるにせよそれなりに毎週職場に行き仕事をしている。時々休みはするけれど普通に仕事をしている。今僕は主人公たちのように急に仕事を休んで、そのあと社会に復帰できるかと考えると到底無理なように思える。僕には特殊なスキルもなければタフな精神もない。そして女の子と寝ることも出来ないし、お洒落なジョークも考えつかない。今は安心感というよりも、こういう働き方も存在しているというように思えるだけだ。随分と僕は大人になった。

今回特に気になったのはマンションのディテールについて。主人公の部屋は渋谷の首都高沿いにあり、小さい寝室と小さいリビング(そこにはテーブルもソファもない)、そして小さなキッチンがある。僕が漠然と憧れている村上春樹作品の部屋が意外と現実的でコンパクトであることに驚く。このくらいで有れば年収500万円の僕にでもどうにかすれば住めるかもしれない。リビングに何も置かずに床に座るって本当にあのオシャレな主人公がそんな事を許すのかという気持ちにもなった。

もうひとつは主人公の服装についてのディテールが語られるシーン。とてもシックな服装をしているらしいのだけれど、僕の頭の中では主人公の顔が村上春樹になってしまう。セックスシーンでも同じように村上春樹の顔でそういった事を考えると、マジかと思ったりもする。そんな事を考えるのがナンセンスなのはわかっている。あくまでもこれは小説であって架空の話なのだ。それでも主人公=村上春樹という図式がなかなか頭から離れないままだった。

話の本筋について深い考察や考えまでは到底及ばないけれど自分なりに思ったことについてのメモでした。

ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)

ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)

  • 作者:村上 春樹
  • 発売日: 2004/10/15
  • メディア: 文庫
 
ダンス・ダンス・ダンス(下) (講談社文庫)

ダンス・ダンス・ダンス(下) (講談社文庫)

  • 作者:村上 春樹
  • 発売日: 2004/10/15
  • メディア: 文庫