楽しく暮らそう

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久しぶりに銀座を歩いた。日曜日の歩行者天国だというのに人はまばらで、何か寂しさのようなものが漂っていた。社会の底辺から世界を覗き込んでいる我々ワーキングプアクラスとしては、このまま経済が停滞して全てが終わって終えばいいと思う。経済が傾けばお前達の仕事も同様に無くなるぞと経済学者や頭の良い人たちは言うのだけれど、僕達にはほとんど恐れがないのは、僕達だけで海の底まで沈むのか、多くの人で海の底まで沈むのかの違いしかないからだ。僕は優しくハグをして、愛する人を抱くようにとても優しく官能的に彼らを抱いて、一緒に海の底まで沈んでしまいたい。僕らは今更経済的強者になること望んではいなくて、少なくともより多くの誰かを巻き添えにして不幸になっていきたい。テロリズム的な思考で幸せに生きていたい。そんな事を思いながら富の象徴としての銀座の街を歩いた。

彼女が髪の毛を短くして、とてもさっぱりとした。夏の終わりの哀愁を含んだ湿度の高い日々をサバイブするにはさっぱりとした恋人が必要だ。元々顔の小さい彼女は髪の毛を短くするとより顔が小さくなる。時々この人の頭の中には脳みそがちゃんと入っていて、機能しているのだろうかと心配になることもあるけれど、彼女は多くの点に置いて僕よりも数段優れているので、僕のそのような心配は杞憂に終わる。大きな雷が鳴り、粒の大きな大量の雨が降り、夏がぽつぽつと終わっていく。

銀座ついでにグルガオンでランチを食べたのだけれど相変わらず絶品で至福。美味しい料理を食べることは楽しく生きることでもある。生活について最近ふとした瞬間に考えるのだけれど、やっぱりメインテーマは「楽しく暮らそう」に尽きるな思う。思い出野郎Aチームのアルバム名でもある『楽しく暮らそう』は今最も支持するべき言葉のように思う。単純で明快で、それだけを心の中に唱えて生きていれば、暮らしが楽しくなるのは間違いない。グルガオンで隣の席に座った銀座の半グレファッカーみたいな男の子はゴヤールの長財布とヴィトンのアイフォンケースという役満の組み合わせで、前世にどんな罪を犯したのかと思い震えた。感性と品性を奪われて生きなければならない程の罪とは一体どれほどの物なのだろうか。彼について言えば身体に纏ったパヒュームの香りが北関東の深夜の安さの殿堂の匂いがした。

楽しく暮らそう

日本橋の高島屋で民芸展を観たのだけれど松本工芸の厨子が本当に素晴らしくて心が震えた。この中に柴崎熊を入れているtokyo903の安藤さんのアンテナとセンスに圧倒された。その圧倒のされ方は先日どこかの国で爆発が起こった際の少し間を置いてから周囲の全て破壊するために生まれた強大なエネルギーの衝撃波のようだった。厨子が10万円程で柴崎熊を30万円程で購入する事ができれば40万円程で、僕はもうこの世界に未練を残すことがなくなる。お金があれば全て解決する世界でお金が無い僕たちは何をどう解決すれば良いのか分からないけれど、ただ心に楽しく暮らそうという魔法のワードを秘めて好きな人と暮らすしかない。

久しぶりに近所の銭湯に行き、この先死ぬまで絵を描いて木を彫って、山に登り文章を書いて生きていければそれでいいなと思いながら湯船に浸かった。熱い浴槽のなかで、蛇口から溢れる大量の水を眺めながら「楽しく暮らそう」と呟いた。