偏見を捨てる事について|ザック・エブラヒム『テロリストの息子』

 

テロリストの息子 (TEDブックス)

テロリストの息子 (TEDブックス)

 

僕は数年近くテレビを見ることをやめているので国内で起こる家族間の悲しい事件も、国際的な大事件ほとんどなにも知らないで過ごしている。それが良い事なのか悪いことなのかはわからないけれど、あまりにも世界は残酷なので僕にはそうする事しかできなかった。テレビを日常的に見ていた頃に時々ニュースで中東のテロリストの顔が流れる事があった。僕はその顔を見ても、ああテロリストだなくらいにしか思うことが出来ずに、彼らにも家族がいることなんて思いも知らなかった。彼らはテロリストで、その先も考える必要なんて一切必要ないと思っていた。彼はテロリスト。その事実だけでもう充分だった。

ザック・エブラヒムの『テロリストの息子』は以前彼がTEDで話したスピーチを基に書かれた本であって、内容はタイトルそのままである。ザックの父親は彼が7歳の時にユダヤ教のラビを殺害し服役する。さらに服役中の1993年にWTCの爆破を仲間と共に実行する。彼の父親は完全なテロリストなのだ。この本には米国史上初の米国内で発生したテロの首謀者の息子が、どのようにして生きてきたのかが幼少期から書かれている。そして後半では彼は世界信じる事に決め、自分の歩むべき道を見つける。全てが事実なのがさらにヤバイ。

テロリストの息子として彼はいじめに遭う。何度転校を繰り返してもいじめに遭い、母親の再婚した男からは虐待の被害を受ける。救いようのない小さな悲劇の連続の日々の中で彼は幼少期を過ごし、おとなになっていく。

テロリストの息子としての生活を記すなかで特に印象に思うのは彼が幼少期にはテロという国際的な問題よりも父親についての家庭の問題をより大きく感じていた事だった。

父親であることよりもテロリズムを、愛よりも憎しみを選択したのだ。

ここ小さな世界に住む子供にとっては、父親がテロリストかどうかよりも、いつもそばにいてくれているかどうかの方が大きな意味を持つ。それが妙にリアルで胸が締め付けられる。

話の後半では彼は自分の歩む道を見つけ出し、その道で生きていくようになる。テロリストになる未来を彼は捨てて、平和主義のアクティビストへとなった。それに伴い自分の中にある偏見から抜け出していく。本当に素晴らしい本だったので是非是非。