夏の間に飲んだいくつものアイスコーヒーについて

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朝起きた瞬間から眠いし、家の扉を開けた瞬間から家に帰りたい。出社してタイムカードのピッという音を聴いた途端に、退勤のピピッを聴きたくなる。最近私の暮らしはそういう毎日です。昨年度までの僕だったらこういう状況になると直ぐに有給を使って休んでいたのに、今年は有給の消費を抑えるために相当努力をして仕事に向かっている。有給を溜め込んで有終の美を飾るのだ。春の夜に咲く桜のように、四季の移ろいを物ともせずに、一年間溜め込んだ有給を使って、僕は海外旅行という満開の花を咲かせたい。最近はそのようなことを考えながら細々と会社に向かっている。

夏がもう終わってしまいそうなので、アイスコーヒーの消費量が急に減った。今年の夏はなんだかとても短かかったように思う。夏の寿命が短くなってきている。そのうち、セミが世代を交代する前に秋が来て冬が訪れるような未来がくるのかもしれない。

その短い夏の中で様々な種類のアイスコーヒーを試したのだけれど、今年の夏も西荻窪のイケメン喫茶「それいゆ」のアイスコーヒーが群を抜いて美味しかった。次点で台湾の「KWON SEAM COFFE」だったように思う。台湾に行ってた全人類が行くべきコーヒースタンドだった。

市販のアイスコーヒーの場合、手軽さと味のバランスから考えると成城石井の紙パックのアイスコーヒーもスッキリとした澄み切った味わいのなかに濃度の高いカフェインがずっしりと構えていて、とても美味しかった。今年飲んだアイスコーヒーで最も美味しくなかったのは業務用スーパーで買った紙パックの微糖コーヒー(70円)で、ガソリンに黒糖を混ぜて作りましたみたいな味だった。美味しいコーヒーを飲んでもまずいコーヒーを飲んでも、夏は終わって秋がくる。

昔よく遊んでいた池袋の大学に通っていた女の子には、彼女特有のアイスコーヒーの飲み方があった。先ずは煙草を燻らせながら、アイスコーヒーの氷が溶け始める頃合いにゆっくりとプラスチックのストローでアイスコーヒーを吸い上げる。半透明の白いストローがブラウンで覆われていく。彼女はグラスに半分ほど残ったアイスコーヒーに、ミルクピッチャーからミルクを注ぎ、ガムシロップとブラウンシュガーを加えて丁寧にかき混ぜる。そうしてできた高濃度の暴力的な甘さの砂糖コーヒーをゆっくりと飲みながら彼女は次の煙草に火をつけるのだった。

毎年夏の終わりになるとアイスコーヒーのことを考える。アイスコーヒーから思考は池袋の彼女へと繋がっていく。いつか彼女に会う事ができたなら、今はプラスチックのストローはだいぶ減ってしまって、みんな紙でできたストローやステンレスのマイストローでタピオカなんかを嬉しそうに飲んでいるんだというような嘘か本当かもわからない、正しくない恋人間の会話をしたい。