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DBCピエール『ヴァーノン ・ゴット・リトル』感想|借金返済のために書かれた小説

副題の『死をめぐる21世紀の喜劇』という文字列に惹かれて購入。帯の紹介文を見てみると、2003年のブッカー賞受賞作品という事だった。ブッカー賞については過去にカズオイシグロの『私を離さないで』が受賞したという事しか知らない。ただ帯にはブッカー賞受賞作の問題作と書かれていた。

ヴァーノン・ゴッド・リトル―死をめぐる21世紀の喜劇

ヴァーノン・ゴッド・リトル―死をめぐる21世紀の喜劇

 

コロンバイン高校の無差別銃撃事件から着想を得て書かれたこの作品は、事件の犯人であるジーザスの親友であるヴァーノンが警察やメディアから逃げるために国境を越えてメキシコまで逃亡していくという話。

この小説のヤバいところは、内容がどうこうと言うよりも、作者にある。作者のDBCピエールはまあまあなクズであるらしく、英語の読めないメキシコ人の友人に、英語で書かれたその友人の家を売るという契約書にサインさせて家を売り飛ばしたりする。金は全て無くなっていき、普通に働いて返すには不可能な額にまで膨れ上がる。そこでDBCピエールが考えたのが小説を書こうということ。この時38歳。借金がヤバいから小説を書いてどうにかしようという考えが最高にクール。結局彼はホテルに篭り数週間でプロットを作成し、本をドロップする。そしてこの本がブッカー賞を受賞し、世界中で翻訳される事になる。作家のオリジンとしては村上春樹の神宮球場でホームランボールを眺めていたら自分にも小説が書けそうだなと思って書き始めたというオリジンが村上春樹っぽくて好きなんだけれど、DBCピエールの金が無いなら本を書けばいいっていうのもかなり良い。金のために書いた本がブッカー賞を受賞するって最高でしょ。

簡単に行ってしまえば新時代の『ライ麦畑』。大人と子供の境界線上にいる主人公のヴァーノンの目線で描かれて行く逃走劇。国境を越えメキシコまで逃げるのだけれど逃走劇の緊張感も読んでて気持ちが良い。さらに言えば最後の怒涛のエクスタシーラッシュが映画的で最高。今まで為混んできたものを最後に発散させる。それも相当なエネルギー伴う爆発。ブッカー賞って何それ知らないんだけどみたいな人には是非読んでもらいたいと思う。

ヴァーノン・ゴッド・リトル―死をめぐる21世紀の喜劇

ヴァーノン・ゴッド・リトル―死をめぐる21世紀の喜劇