アトピーと生活

ほとんど完治したアトピーの事を中心に

自己完結型の泥酔

会社の昼休み外の喫煙所で煙草を吸いながら僕は友人にメッセージを送る。「嫁飲会」たった3文字のメッセージを受けとった彼からすぐに返信が来る。「何する?」

嫁飲会という3文字の暗号は、読んで字のごとく「嫁が飲み会なので今日は5時以降完全フリーなので、めちゃくちゃに遊びましょう」という意味で、月に何度か突然出現するこのイベントを僕たちは心待ちにしているところがある。だらしない生活を送っていた既婚者にとって、嫁というのはモラルという概念がそのまま地上に舞い降りて生命としての命を宿した存在なので、嫁がいないというのはモラルや法律をある程度は厳守しなくてもよいという意味を持つのだ。とは言っても穏やかな暮らしをする僕たちは、何も嫁がいないからって性的衝動に走るわけでも、窃盗や強盗、さらには殺人までを視野に入れて夜の街に繰り出すという事でもない。僕たちが良くやるのは、屋上のペントハウスの屋根にハシゴをかけて登り、その上にヘリノックスのチェアやらテーブルやらを持ち込んで、遠くに見える煌びやかな再開発で建てられた超高層ビルを眺めながらタブレットでアニメを見たり、打ち上げ花火をしたり、焚き火をしたり、ジントニックを飲みながらふたりとも黙って読書をしたり、適度なコンプライスをゆっくりと燻らす程度のチル。

友人からのメッセージになんと返信しようか悩んでいると、取り合えず6時に家に行くという事だった。行動力は何よりも大切なのだ。僕としては6時までの間に何をしようか決めればいいだけなので、仕事中にゆっくり何をするか考えればいいかというようなものなのだけれど、実際問題仕事中というのは全くそんなことを考える気になれず、朝に読んだバナナフィッシュにうってつけの日について考えていた。というのもナインストーリーズの良さが分かる人間に僕が漠然と憧れているからなのだけれど。そんな事を考えていたらいつの間にか時計の針は僕の大好きなポジションにピタっと張り付いちゃうんだから僕は革の鞄に荷物を詰め込んで、ビルケンのサンダルからVANSのJAZZに履き替える。いつも通りに定時で会社を後にし、家に5時30分ごろに着く。シャワーをあびていると友人から着信が来る。なになにどうしたのよと聞くと今サーティワンにいるんだけど、何買って行く?との最高の電話でロッキーロードとナッツトゥーユーのダブルを頼む。いわゆるROCK TO YOU。

サーティーワン以外にも沢山お菓子やドリンクが入ったコンビ二の袋をぶら下げて来た友人は早速汚れたシュプリームの古いワークシャツの胸ポケットからコンプライアンスを取り出して僕に笑いかける。こいつと縁を切らない限り僕はまともな人間になれないんじゃないかって気がして来る。僕の意思の弱さと、モラルの低さ。ニタニタ笑いながらこっちを見て来る友人にではご相伴にあずかりますと深々と頭を下げて燻らしてDONE。そんな状態で椅子にもたれかかり友人とテレビでガンダムを見る。これ素面じゃ見れないねだとかクソつまらないとか見たいと言って来たくせに散々な暴言を吐く友人を尻目にの意識は遠のいて行く。ああもうダメですねとなった瞬間にベッドに転がり込み毛布で身体を包む。極楽drすねおやすみなさいと言ってると友人がキッチンの冷蔵庫からサーティーワンを持ってくるものだからベッドから飛び起きてピンクのプラスティックのスプーンでちまちまと食べる。その時僕のスマートフォンがピロピロとなり始めて、嫁からの着信。出て見ると声の主は嫁ではなく嫁と一緒に飲んでいる友人で、嫁が酔いつぶぶれたから車で送っていくとの事。あーはいよろしくお願いしますねとか言ってアイスを齧っているとよう潰れた嫁が帰ってくる。送って来てくれた友人にお礼を行って見送る。「久しぶりにこんなに酔い潰れた。気持ち悪い。」とベッドで横たわる嫁に僕と友人は「自己完結型の泥酔は許容できる」と声を合わせて彼女を褒め称えた。