生活.com

お役立ち情報と生活

ジェーン・スー『相談は踊る』感想|君がいない事は君がいる事だな

f:id:DHFclub:20190425123235j:image

([し]10-2)ジェーン・スー 相談は踊る (ポプラ文庫)

([し]10-2)ジェーン・スー 相談は踊る (ポプラ文庫)

 

随分前にSNSで『相談は踊る』の写真をアップしている人がいた。写真に添えられたコメントには、誰かの日常が知りたくてと言ったような事が書かれていたように思う。相談は踊るのポップな表紙と、当時は存在すら知らなかったジェーン・スーという謎の存在も相まって、いつか読みたい本リストに僕は瞬時に加えたのだった。なかなか商業施設や新宿などの都会にいく生活をしていないので、本を買うとなると散歩ついでにいく、中央線沿線のナイスな古本屋や、天下のAmazonという事になる。最近はAmazonにお金を支払うよりも、ローカルな古本屋にお金を落とす方が将来的に絶対に良いのではと思い始めて、古本屋でばかり本を買っている。そんなこんなで自分で自分を謎に縛り付けながら、行く先々の古本屋で探していたのだけれど、やっと吉祥寺のバサラブックスで見つける事が出来た。余りにも『相談は踊る』が見つからないので、比較的よく見るジェーン・スーの他の著書『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』とか『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。』を先に読んでしまっていた。

貴様いつまで女子でいるつもりだ問題 (幻冬舎文庫)

貴様いつまで女子でいるつもりだ問題 (幻冬舎文庫)

 
女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。 (文春文庫)

女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。 (文春文庫)

 

紆余曲折を得てやっと手にれた『相談は踊る』は今まで読んだジェーン・スーの著書の中で最も分かりやすく笑ってしまえる本だった。相談は踊るはTBSラジオで放送していたものを書籍化したもので、リスナーの相談にスーと代行MCと呼ばれるアナウンサー達が答えるという構成で進んで行く。多いのは色恋沙汰や、人生相談なのだけれど、その中にもいくつか情緒的な相談があったりして、その真面目と不真面目のリズム感が気持ち良い。

印象的だった相談のひとつに「単身赴任を始めたら、柿の種のピーナッツが余ってしまうようになった」という相談があった。相談者は男性で、柿の種のあられが特に好きで、おやつにもつまみにも良く食べていた。家族と暮していた頃は、相談者はあられをメーンに食べ、余ったピーナッツを奥さんや子供がおやつに食べたいたと言う。それが単身赴任でひとりで生活するようになり、ひとりで柿の種を今までと同じように食べると、ピーナッツが大量に余ってしまうというのだ。相談としてはそのピーナッツをどうしたらいいでしょうかということなのだけれど、それよりも、今まで当たり前だった存在が無くなったことにより、その存在の輪郭が浮き彫りになったという事に惹かれてしまう。この相談を読んでいた時に真っ先に思い出したのはサニーデイ・サービスの『桜 super love』の歌い出しのフレーズだった。

君がいない事は 君がいる事だな

今までそこにあったものが、急になくなってしまう事が人生において多々あるのだろうし、これから先も増えていくのだろう。僕たちは、人生という時間において、部屋という空間において、消えてしまった存在が占めていた余りにも大きすぎるスペースに途方に暮れてしまう。そしてその時間と空間は永遠に、埋まることのない空白として存在し続けるのだから困ったものだな。人生なんて、この余白がどんどん大きくなっていくものだと思うのだ。そんな悲観的な言葉ばかり言っていてもしょうがないのは、この本を読めば明白で、みんな何かを悩みながら、楽しみながらそれぞれの人生を生きているのだ。そのような事を思った本だった。

([し]10-2)ジェーン・スー 相談は踊る (ポプラ文庫)

([し]10-2)ジェーン・スー 相談は踊る (ポプラ文庫)