アトピーと生活

ほとんど完治したアトピーの事を中心に

早川義夫『ぼくは本屋のおやじさん』躁鬱おじさんの憂鬱な日記

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とても有名な本で読みたい気持ちはあるのに、なかなか読む機会を作れないような本が僕にはたくさんある。最近はそういった本を、少しでも気になっている本を何も考えずにとにかく読んでみようという気分なので早川義夫の『ぼくは本屋のおやじさん』を読んだ。

ぼくは本屋のおやじさん (就職しないで生きるには 1)

ぼくは本屋のおやじさん (就職しないで生きるには 1)

 

まずタイトルがおじさんではなく、おやじさんなのが良い。おじさんとおやじさんでは距離感が違うように思う。出版当時と今の文化の違いなのか分からないけれど、おやじさんという言葉のチョイスにグッとくる。後は副題の「就職しないで生きるには」みたいなやつが流石にダサいのでへんなテーマ付けないでくれと思う。

著者の早川義夫はジャックスというバンドを解散して、毎日猫を抱いて椅子に座っていれば1日が終わっていく生活がしたいと本屋を始める。彼は出来るだけ早くおじさんになってしまいたかったと言っている。本屋を10年程やった後に、書店を閉めてまた歌を歌いだす。Spotifyで検索してみるとすぐに出てくるので、この本を読みながらずっと聞いていた。こういう時にSpotifyは便利。湿度の高い曲に合わせて優しい声で歌うのが印象的だった。

本の内容はというと基本的に延々と音楽同様に湿っぽい愚痴のような話を聞かされる。取次や出版社への不満や、迷惑な客への不満。近隣住人への不満と、うまくやる事のできない自分自身への不満。とりあえず延々と不満が語られる。僕はなんでこんな本を読んでいるのだろうかと途中思う事が何度かあった。それは植本一子『降伏の記録』を読んでいる時もそうだった。なんで他人の不満だらけの苦しい日記のようなものをお金を出してまで読んでいるのかと何度か思った。それでも本を閉じて本棚に押し込む理由にならなかったのは、その生活の中の一瞬のきらめきのようなものがあるからだ。生きているとそれなりに面白いことや素敵な事があったりして、その何日かに一瞬だけ訪れるきらめきのためにみんな生きているのかもしれないと感じて何となく安心する。これから本屋を始めたいというような人が直感的に手を出してしまいそうな本だけれど、本屋に希望を抱いている人は精神を強く持ってこの本を読むべきだ。リアルはハード。現実はマジでヤバい。そのような事が最初から最後まで書かれている。後書きで大槻ケンジがこの本を若い時に読んで本屋のおやじさんになる事を辞めたと言っていて笑ってしまった。

書店というのは不思議な場所で、何かを売っているお店なのに基本的に店員は全くこっちに興味を示してこない。興味を示されていたらそれは万引きを警戒されているくらいで、ある程度規模の大きな本屋であれば、基本的にこっちから探しても見つけられないくらいあっちはこっちに興味がない。だから特殊な親密さがあって、居心地が良いのだろう。

全く関係ないのない話だけれど僕が最も好きな本屋は東京の西の端っこの鷹の台という駅にある「みどり文庫」というおやじさんがやっている小さな古本屋で、無造作に本が陳列されているのになんだかとても清潔感があって、何しろ店主のおやじさんが本当に素晴らしい人なのだ。僕が高橋源一郎の本をレジに持って行くと、「源一郎か。だったらこれも持っていきなさい。」と知的で文化的なおまけをしてくれたりする。本当に良い書店なので行ってみて欲しい。地球上の全人類一人残らず。

ぼくは本屋のおやじさん (就職しないで生きるには 1)

ぼくは本屋のおやじさん (就職しないで生きるには 1)