アトピーと生活

ほとんど完治したアトピーの事を中心に

所作とサーファー

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喧嘩のようなものをした。原因は彼女が彼女のスマートフォンを嫌が応にも僕に操作させない事だった。このような書き出しだと、どうしても僕が嫉妬深い男で浮気を疑っているように思うのだろうけれど、全くそんな事はなくて、本質的な原因は所作が美しくないという事に尽きる。彼女がどんなサイトを見ていようと、SNSでどのような写真をシェアしていようと、誰とチャットをしていて、どんなスケジュールが入っていても特に僕個人としてはどうでもいいと思っている。それを探る気にもなれないし、何か不都合な事実があったとしても、責める気はない。原因が彼女だけにあるとは限らないし、基本的に悪いのはいつも僕なのだ。人生の経験的に。そもそもスマートフォンを他人に操作させる不快感は僕も共感する。何も隠し事はなくても、些細な予測変換で出る単語とか、履歴とか、そういう情報を見られることを気持ちの良いことだとは思えない。だからスマートフォンを触らせたくないというその考えは分かる。ただそのような人間のスマートフォンを触る所作は概して美しくない。画面を必要以上に他人に見られないようにしたり、ロックパスワードを隠して解除したり、見てほしいサイトのURLを送ることで自分のスマートフォンでは見ないように操作したり。その一連の所作の全てが美しくないのだ。という僕のエキセントリックな指摘を聞いて彼女は目を丸くしていた。堂々としているべきだ。隠し事なんてものは大なり小なり誰にだってある。だからそんなものに束縛されて、動作を支配されてはいけない。バレてはいけないなんて考えてはいけない。僕はその機械の中の情報については全く興味がないのだけれど、君の現実世界での物理的な振る舞いについては出来れば気持ちの良い振る舞いをしてもらいたいと思っている。誠実でいるということは素晴らしいものだけれど常に誠実でいることは難しいものだから、僕はそれについては責めるつもりはない。ただ、背徳感の支配下にならないでもらいたい。そんな事を映画館から駅まで歩く間に話をして、それ以降会話をしてもらえない。僕といえば言いたいことを言ってしまったのでスッキリしているので、感情は穏やかな海のようなのだけれど、彼女の海では心の中に住む小さなサーファー達が嬉しそうにパドリングをして大きな波に向かっていっている。僕は祈る。「愛は祈りだ。僕は祈る。」どうか波が収まり、穏やかな海になりますように。僕やサーファー達が大怪我をしませんようにと。

好き好き大好き超愛してる。 (講談社文庫)