会社の飲み会をキャンセルしてその金で嫁と焼肉を喰らう

いつもと同じように電車に乗り、いつもと同じように会社のPCを立ち上げる、スケジューラーにいつもとは違うスケジュールが入っていた。飲み会である。参加費5000円で3時間飲み放題。会社の人たちとは仲良くやっていて、飲み会も数少ないコミュニケーションのひとつだと認識しているので基本的に行くようにはしているのだけれど今日は違う。今日はもっとヤバい事がしたいのだ。僕には会社の飲み会や会費を要求される企業パーティー、婚活パーティー、果ては結婚式のお誘いまで当日までは行く気満々で準備しておきながら当日にドタキャンをして会費を自分の好きな事に注ぎ込むという偏った癖がある。初めてこの甘美な魅力に取り憑かれたのは社会人になってすぐの同期全員での飲み会だった。そもそも同期たちとの飲み会に行くのが面倒だった僕は当日に適当にごまかして行けなくなった事を伝え、会費で払うはずだった4000円を握りしめて向かうは新宿、紀伊国屋本店。世界中の本がここに集まっているのではないかと錯覚するような広い店内では丁寧に掃除されたリノリウムの床が天井の照明の光を反射して輝いている。あー天国。極楽浄土。神に何も誓わなくとも一切の徳を積まずとも僕達は本さえ信じれば極楽浄土に行けるのだ。アーメン。4000円あれば大抵の本が買える。その時買った本は忘れたけれど舞城王太郎やブコウスキー、その他にもちくま文庫の今月の新刊などを買い込んだのだ。この時の高揚感、脳に直接キマるタイプ、完全にブッ飛んで集中し過ぎて白目を剥いている、異様に喉が乾くなどの快感は僕を完全にぶっ壊した。対して面白くもない同期達の形骸化した飲み会の会話というマイナスの地点から、一気にゼロの壁を突き破り、プラスの座標を駆け抜ける点となった僕自身。すぐそこまで迫って着ている無限という断崖絶壁にも僕は臆することなく飛び出した。その瞬間に僕は自由になったのだ。完全な自由。もう自由ですらない。自由とは本来不自由の中に存在するという矛盾をはらんでいる。しかし僕はその時不自由の檻を壊し、自由の存在しない世界で完全な自由になったのだ。それ以降僕はもうダメになってしまった。

対して仲良くもない知人の結婚式を当日にキャンセルし、その足で青山に行きコムデギャルソンのシャツを買い込み、また対して仲良くもない友人のパーティーもキャンセルして吉祥寺ココナッツディスクでレコードを買う。一度ハマったら抜け出せなくなるこの病にやられてしまった僕は今日も今日とて直前でキャンセルし代わりに奥さんにラインを送信。「焼肉ドラゴン」奥さんからの返信は「行くドラゴン」。という事で2人で好きなだけ食べて好きなだけ飲んで酔いながら適当な話をして爆笑するという最高の焼肉ドラゴンをキメました。人生を楽しく過ごすライフハックなので誰かにパーティーなどを誘われたら試してほしい。信用は失うけれどガンギマる。逆に言えばキマるし心底ウザったい信用も失う事が出来る。最高ドラゴン。そもそも失われない信用なんて信用じゃないのだ。

焼肉ドラゴン

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