アトピーと生活

ほとんど完治したアトピーの事を中心に

谷村志穂+飛田和緒「ごちそう山」感想

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うちのキッチンには数冊の料理本が常備されているのだけれど、飛田和緒先生の本が1番多い。1回作れば後はレシピを見ないで作れるような簡単な調理しかしないのに何を作っても美味しい。特に美味しいのはセロリのスープで、毎年寒くなってくるとたくさん作ってしまう。

主菜

主菜

 

 

そんな僕の敬愛する和緒先生が15年以上も前に小説家の谷村さんと一緒に山を登って料理を作るというなんとも面白そうな本を出しているという事を山旅々を読んで知る。Amazonで検索して見るともう絶版になっているようなのでみんな大好き愛しのAmazonマーケットプレイスで買って、そして読んだ。最高でした。

まず何よりも谷村さんの描く和緒先生が最高にキュート。元バレリーナF1ドライバーの旦那さんがいるという和緒先生が可愛くないわけない。ああこんなに可愛らしい人があのレシピを考えていたなんてとか思ってしまう。というよりも谷村さんが本当に和緒先生の事が好きなんだろうなという事が文章を通じて伝わってくる。谷村さんと先生の間にある親密なものの存在がそうさせているのだろうけれど、そこには親しみのようなものがある。

志穂さんの美しい文章

僕も奥多摩秩父の低山を中心に山に登るのだけれど、この本を読んで登山の楽しみ方っていうのはいくつもあって、それを全て許容してくれる自然の懐の大きさみたいなものを感じる。文章を担当している谷村志穂さんは小説家なので当たり前なのだけれど文章が素晴らしく上手い。稜線から望む富士山の偉大さや、雪山の静けさまで文章で表現してしまう。文章が上手いとか下手とかではなくて谷村さんは山の中で、木や空や地面をたくさん見ている。コースタイムなんて夢のまた夢という登山スタイルが可能にする、細部まで物を見るという事。新緑の青さ、前日の雨で出来た水溜りに浮かぶ木の葉、夕暮れのなんとも言えない感情を抱かせる光、その全てを細部までみて感動をして、文章にするということの尊さ。なんだかとても感動してしまった。僕が山に行ってもその細部の美しさまで見つけることが出来ないのは、きっと歩くペースが早いからなのだと思う。きっとそれだけではなくて、目的としているものが違うのだ。出来るだけ遠くに行きたい僕と全てを楽しむ彼女たちでは目的としているものが違くて、目的なんてものは楽しみための理由でしかないのだから、目標なんて沢山あって、定めるべきではないのだ。ウルトラライトハイキングという軽量化した道具で早いペースで歩き、遠くまで行くという登山の方法が好きなのだけれど、ゆっくり歩いて山を山としてだけで捉えるのではなく、木々の細部まで見て何か得る事だって意識の中では相当な遠くまでいける。そしてそれを、自分を通して文章にする事。3次元の物を自分を通して2次元にする事。そういう事をしたいと思ったのだ。

和緒先生の絵と料理

和緒先生はスケッチをすることが好きなようで本書でも登山の途中に良くスケッチをしている姿が書かれている。そのうちのいくつかは挿絵として見ることができてその全てが美しい。和緒先生も多くをちゃんと見ている。見るという行為は人間の生活を豊かにする重要な要素なのではないかと、見る力のある2人の行動を見ていると思う。そしてそのスケッチよりも素晴らしいのが本職である料理で、ちゃんと山で調理する事を前提に考えられていて、それでいて全てがとにかく美味しそうなのだ。良くパスタを山で食べるのだけれど、和緒先生の作るにゅうめんの美味しそうな描写にやられて今までは山でにゅうめんが食べたくてしょうがない。他にも簡単なキムチ鍋や、キャンプでのカレー、梅の雑煮などの料理の数々に読んでいるとお腹がすいてくる。そして何故か満たされた気持ちになるのだ。家庭で作る和緒さんの料理も山で作る料理も全ての本質は食べた人を喜ばせたいという事と自分が美味しい物を食べたいという所にあるのだ。自分も含めて、誰かの思いが動機にある行為は強度が違う。硬いし強い。和緒先生は25L程度の小さなディパックに料理に道具だけをパンパンに詰め込んで山に登る。その姿を想像しただけで何とも愛おしい。

イカーには最高の本

バックパッキング入門や遊歩大全のようなクラシックの棚にいつかならぶ本だと思う。それくらいすごいのだ。そしてこの本は登山の可能性を押し上げてくれる。全てのハイカーに捧げたい僕的クラシックです。

ごちそう山 (集英社文庫)

ごちそう山 (集英社文庫)