hello(190128)

「言葉が出てこないのは今、満たされている証しそのものだよ。」
君は黄色と青のタータンチェックのストールを首に巻きながら、白い息とともにそんな言葉を口にした。彼女の口からでた白い息はすぐに消えてなくなったのだけれど、その言葉はいつまでも消えずに空中に宙ぶらりんになって、いつまでもそこにあって、僕のことを見つめているような気さえした。
「今の生活には満足しているけれど、言葉が出てこないのは困るかもしれない。」
店内で飲みきれなかった珈琲の入ったカップに口をつけながら僕は言う。その言葉を聞いて君は笑いながら「ちゃんと出てくるじゃないの言葉。まだ満足できていない証し、そのものだよ。」と僕の目を見てそう言った。君の目と君の口から生まれた宙ぶらりんの言葉の両方から見つめられた僕は、なんだか久しぶりに人間の目を見たなと関係のないことを考えた。