熱海ノスタルジア

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一年ぶりに熱海に来ている。atami ginzaのピンク色に輝くネオン管。FUJIYA HOTELの卓球台。浴衣姿でコンビニに駆け込む人々。熱海の風景は僕が子供の時と変わらない

子供の時は毎年夏になると熱海に来ていた。当時の記憶も朧げにあるけれど海の色そのものを覚えていない。海の色は今と同じように泥に塗れた黒い海だったのだろうか。その海で僕は楽しく泳ぎ、父や母や祖父母達はそんな子供達を見ていたのだろうか。別に汚い海に入れやがってという気持ちがあるわけではなくて純粋にあの時の海も今と同じ色だったんだろうかとふと思った。

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毎年泊まっていた旅館は坂の上の方にあり海までは少し距離のある場所にあった。祖父の会社関係の人がやっている旅館でいつも良くしてくれた。夜になると、親族で泊まっている旅館を母とふたりで抜け出して熱海の街を散歩した。夏の暑さと坂の下から登ってくる潮の匂い。坂を下って海の近くまで歩くと綺麗なホテルがいくつかありコンパニオンのお姉さん達と浴衣姿のおじさんたちが連れ合いながら歩いているのを良く見かけた。母はそのような人たちを見て「エッチなお姉さんとエッチなおじいさんだね」と言っていた。僕は手を繋いでいる母のそう言った言葉のひとつひとつを聞いて、少しづつ大人になっていくように感じていた。時々適当なホテルにふらっと入りロビー階を散策したり、お土産やを物色した。あの時僕はなんだか大人の世界に踏み入れたような気がしていたけれど母は楽しかったんだろうか。大人の母が見る子供の世界を、子供の僕は大人の世界だと勘違いしてはしゃいでいた。母は缶ビールを買って僕はジュースを買って、スマートボールで遊んだりして旅館に帰った。僕がこの出来事を強く覚えているのは母との秘密だったからだと思う。なんとなく誰にも言ってはいけないような気がした。母と僕の秘密だった。

熱海に来るといつもそういう過去の事を思い出す。観光地に行って楽しいねだけで済ませるのではなくて、散らばって埋まっている記憶を掘り起こす作業をしている。

熱海の街にはそういう空気がある。寂しさと楽しさを多分に含んだ空気が浜風に乗ってくるからだ。その空気が街を包んで僕たちは今日を思い出に変えていく。今日のこともいつか思い出して悲しくなったり笑ったりするんだろう。うんざりするね。